一介のサラリーマンである山下拓郎。彼が差出人不明の手紙から妻の浮気を知らされ逆上し、ついには妻を刺殺してしまう。この事件以来、山下は極度の人間不信に陥り、自らを厳しく律しストイックな更生の道を歩むことを決心する。８年間の服役後、仮出所し理髪店を営みながらも人々との交流を避け、本音を明かす唯一のパートナーとして“うなぎ”を選ぶ。

　うなぎの餌を獲りに行った河原で、偶然にも自殺未遂の女性・服部桂子を発見する。自分の暗い過去を拒絶する桂子は新たな生活を望むと同時に、恩を返す意で山下に理髪店の手伝いを申し出て、山下は嫌々ながらも桂子を雇い、共に働きはじめる。お節介ながらも心優しい隣人や桂子の優しい心に触れ、山下は次第に心を開きはじめ人間性を取り戻し始めていくが、彼の“過去”が引き起こす事件がそれを許そうとはしなかった・・・。

今村昌平監督は、1989年の『黒い雨』以来の沈黙を破り、『うなぎ』を制作。
この作品で、第５０回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞する。
原作は太宰治賞受賞作家・吉村昭の「闇にひらめく」。

原作文庫本｢闇にひらめく」（『海馬(トド)』に収録・新潮文庫刊）
ビデオ（販売：KSS、1998年4月24日)