東京湾を望む臨海副都心、クリスマスの日に遊びに来た森田ミツは、吉岡努という沖縄出身の青年と出会う。吉岡はミツを車に乗せ、沖縄出身者の集う酒場へと連れていった。ミツにとって驚きと喜びに満ちた時間が瞬く間に過ぎ、その夜、二人は当然のように結ばれる。

　しかし、その喜びもつかの間、ミツはハンセン病と診断され、北アルプス山麓の療養所へと隔離されてしまう。心細さと不安を抱えるミツだったが、シスターの山形や稲村看護婦から温かく迎えられる。特に同室の本ピアニスト・加納たえ子は、ミツと同じ年の頃に入園したという事で、ミツと交流を深める。

　ミツのハンセン病は誤診と判明する。ミツは”外の世界”へと戻ることが可能になった。しかし、たえ子や、ここで８０年間も生活している上条老人とのふれあいによって、自信の存在と価値を見出し、園内にとどまることを決意する。やがて彼女は、この園にとって不可欠な存在となっていく。

　吉岡はすぐにでもミツを訪ねようと思いながら、ハンセン病の体験を持つ酒場のマスターの助言もあって、一通の年賀状を送っただけにしていた。しかし、待ち望んだ返信がたえ子から届いたことで、吉岡は一目散に信愛園のある北アルプス山麓へと向かう。今こそ、愛の行方を確かめるために。しかし…。

●原作　遠藤周作「わたしが・棄てた・女」より
●熊井啓監督が遠藤周作の原作に手がけたのは、『海と毒薬』、『深い河』で今回の作品で3作目。