INDEX 作品データ BACK

DOG-FOOD
1999年4月27日公開
上映時間:47分
配給:スローラーナー

CAST
田辺誠一
妻(砂城子):椎名英姫
恋人(かざり):友田誉子
STAFF
監督、脚本田辺誠一
撮影監督:福本淳
撮影助手:中村夏葉
:馬場元
演出補:行定勲
音楽:本位田牧
エンディング・テーマ:ジェーン・バーキン
編集:田辺誠一
:今井剛
制作担当:森満康巳
プロデューサー:鳥澤晋
:田辺誠一
INTRODUCTION
 夏祭りの記憶。にぎわう人々。一組の夫婦が、楽しげに歩いている。打ち上げられる花火。彼らは、露店で水風船のヨーヨーを吊り上げる。それは、過去の幸せの光景である。それから、しばらくして夫に愛する女(かざり)がいることが分かったとき、妻(砂城子)は家を出ていった。その後に残されたのは、彼と犬のパオパオ。ベトナムヘの赴任を前にして、彼は自分の思いや感情を持て余し、彼女が残していった犬とどう対したらいいのか分からない。砂のように流れる時間。イラン人の友人が毎日のように風呂に入りにくる奇妙な日々。そして、彼の感情の深く浸食している喪失感。
 ある日、散歩に連れ出そうとすると、パオパオはグイグイと彼を見知らぬ道へと引っ張っていった。路地を抜け、たどり着いたのはあるビルの屋上。おそらく、そこは砂城子がよくパオパオをつれてきていたのだろう。男は、一瞬屋上に佇み犬の背中をなぜる彼女の気配を感じるのだった。…答えが出せない…。
 失っていく恐さの中で、現実だけが一人歩きをしていく。無為な時間の中で、彼は突然自分の犬が、自分からトラックの中に飛び込んで死んだという知らせを受ける。海外には犬は連れていけないと言っていた電話での会話を、パオパオは聞いていたのだろうか? 手にはパオパオの首輪だけが残された。それから、彼は恋人とも会わずイラン人の友人さえ家に入れなかった。混乱の中で、浴衣姿の妻を街の中で幻視するのだ。自分はどこに向かおうとしているのか。砂城子は、忘れ物をとりに来て、料理を作ると「過去だって、自分の心次第で変えれると思う」という言葉を残して帰っていった。一人の家。彼は気配を感じる。台所に立っていた砂城子の体温を、床に蹲っていたパオパオの気配。悔やみきれない現実だけが残っていた。男は、犬が残したドッグ・フードを手にとり、それを食べる。何かを感じたいと思い、忘れないために…。
 しかし、失われた時間を取り戻すことは出来ない。冷蔵庫の中に、あの祭りの日に二人で吊り上げた水風船がしまわれているのを見たとき、ある決意が彼を満たすのだった。
 引越しの日がやってくる。イラン人の友人との別れ。犬小屋の中にパオパオがどこからか集めてきた山ほどの靴。男は、水風船を家の門に残して歩き出した。その風船を男の恋人、かざりが手に取る。振り返らず、歩いていく男の後ろ姿。ヨーヨーを見つめるかざり。砂城子の存在の大きさがそこに凝縮されている。男の背中。かざりの目が、一瞬家を見上げた…。

Note
全編デジタルカメラで撮影。
撮影は、篠田昇の助手としてこれまでキャリアを積んできた福本淳がを担当。
演出補には岩井俊二作品で助監督を勤めている行定勲。
『DOG-FOOD』は3部作として製作が予定されており、第2部はすでにポルトガルで撮影が終了しているそうです。



INDEX 作品データ BACK