| チーンという音がして、鉄の扉が開く。 ピザの入った赤い箱と、サラダやコーラが入った赤い手さげ袋を持ったマチコが入ってくる。 そこは20畳はあろうかという、バカでかい部屋。 中には椅子が三つある。 | |
| マチコ | 「あれ?」 |
| そこへ若い男が入って来て、椅子に座る。 マチコ、キョロキョロして、 | |
| マチコ | 「……あ、すいません、エレベーターはどこですか?」 |
| 若い男 | 「ここですよ」 |
| マチコ | 「え?」 |
| 若い男 | 「これが、エレベーターです」 |
| マチコ | 「これが?」 |
| その時、ドアがゆっくり閉まっていく。 | |
| マチコ | 「……(閉まるドアをじっと見つめる)」 |
| × × × | |
| 若い男 | 「何階ですか?」 |
| 若い男がなにげなく手を伸ばした壁面を見ると、
そこには押しボタンがズラーッと並んでいる。 | |
| マチコ | 「うわーっ」 |
| 一列に15個のボタン。それが20列並んでいた。 | |
| マチコ | 「300階……です」 |
| 若い男 | 「ああ、最上階ですか、遠いですね。僕は39階です」 |
| 若い男、一番右の一番下、「300」のボタンを押
す。 そして、自分が降りる「39」も押す。 エレベーター全体がグオンッ、と揺れ、ゆっくりと上昇を始める。 | |
| マチコ | 「う……動きだした」 |
| ドアの横についた、デジタル表示の数字がひとつず
つ増えていく。 「1」から「2」へ。 そして、「3」「4」「5」……。 | |
| 若い男 | 「座ったらどうです? 長いですよ」 |
| マチコ | 「あ、はい」 |
| マチコ、デジタル数字をチラチラ見ながら、椅子に座る。 エレベーターは次第に加速する。 「10」「11」「12」……どんどん数字が増える。 | |
| × × × | |
| チーン。ドアがゆっくりと開く。39階に到着。 | |
| 若い男 | 「じゃ(と会釈して、出ていく)」 |
| マチコ | 「どうも」 |
| ドアが閉まり始める。 その時、バタバタと足音が、そして「待って!」という声が聞こえる。 | |
| マチコ | 「あっ(慌てて立ち上がり、「開」のボタンを押す)」 |
| ドアが開く。 乗って来たのは、荷物を持った宅急便屋。 | |
| 宅急便屋 | 「すいません」 |
| マチコ | 「いえ(と、座る)」 |
| 再び、ドアがゆっくり閉まる。 | |
| × × × | |
| 郵便屋、ボタンの前に立つ。 | |
| 宅急便屋 | 「(荷物を見て)えーっと……47か。(ボタンを見て)……47……47……」 |
| ボタンを探すのに時間がかかる。 その間に上昇を始める、エレベーター。 | |
| 宅急便屋 | 「(マチコに)どこかな? 47は」 |
| マチコ | 「え?」 |
| 宅急便屋 | 「47」 |
| マチコ | 「(立ち上がり)47……? えーっと」 |
| 二人で探す。その間に、ぐんぐん加速。 デジタルの数字は「44」「45」「46」「47」と増えて行く。 | |
| 宅急便屋 | 「あ、越えちゃったよ。47」 |
| マチコ | 「越えちゃいましたか」 |
| 宅急便屋 | 「やばい。ちょっと50押して」 |
| どんどん加速する、エレベーター。 | |
| 宅急便屋 | 「だめだ、55。55押して」 |
| マチコ | 「あっ、ありました47」 |
| 宅急便屋 | 「47じゃないよ、55。いや、60」 |
| マチコ | 「え? 60?」 |
| ボタンの前でオロオロする、マチコ。 |