| 父 | 「大丈夫さ。パパとママは愛し合ってるんだから。で、何だ。パパに何の用だ」 |
| 愛 | 「教えてほしいことがあるの」 |
| 父 | 「ん? また何か、ド忘れしたのか?」 |
| 愛 | 「うん」 |
| 父 | 「おまえ最近モノ忘れがひどすぎるぞ」 |
| 愛 | 「あたしたちの世代はさ、産まれた時から記憶再生装置があるのよ。どうでもいいことは頭に記憶しないの」 |
| 父 | 「で、何を忘れたんだ、今日は」 |
| 愛 | 「名前なの」 |
| 父 | 「名前? 誰の?」 |
| 愛 | 「ミュージシャンよ、パパの好きな」 |
| 父 | 「ビートルズか?」 |
| 愛 | 「ビートルズはわかってるの」 |
| 父 | 「ははあ、リンゴ・スターだな。あれは一番目立たないからな。結構忘れやすいんだよ」 |
| 愛 | 「ううん、リンゴ・スターは覚えてたのよ」 |
| 父 | 「じゃ、ポール。ポール・マッカートニー」 |
| 愛 | 「違うの。ポール・マッカートニーじゃなくて、ジョン・レノンでもなくて……」 |
| 父 | 「えーっと……ポール・マッカートニとジョン・レノンとリンゴ・スターと……」 |
| 愛 | 「あと一人は?」 |
| 父 | 「あれ? あと一人誰だっけな」 |
| 愛 | 「ねえ、誰? どうしても思い出せなくて気持ち悪いの」 |
| 父 | 「えーっと、ポールにレノンにりリンゴ・スター……あとは……えーっと……」 |
| 愛 | 「もう。記憶再生装置で調べればいいじゃない」 |
| 父 | 「あ、そうか。これで調べればいいんだ」 |
| 父、テレビの横にある機械を見る。 それは、パソコンのような機械。 | |
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古い洋館。 テロップで、「A.D.2100」 | |
| Na | 「西暦2100年、つまり今から百年以上も先の未来。そこには、空飛ぶ自動車もタイムマシンもない……。未来の私たちは、現代よりもずっと古めかしく質素な暮らしを送っていた。---百年の間、人類はいったい何をして来たのだろうか。技術の革新は止まってしまったのだろうか? 新たな発明や発見を放棄してしまったのか?」 |
| メインタイトル「いとしの未来ちゃん」 |
| 洋館の中に暮らす。少女と妹。 | |
| Na | 「その秘密は、2100年に住むこの少女たちが知っていた。これは、はるか未来に語られる、ちょっと未来の物語……」 |
| ベッドにいる、二人。 |
| 妹 | 「ねえお姉ちゃん、記憶再生装置ってなあに?」 |
| 少女 | 「思い出を記憶しておいて、いつでも見られる機械のことよ」 |
| 妹 | 「ビデオ?」 |
| 少女 | 「そう、すごく性能がいいビデオ」 |
| 妹 | 「ふーん」 |
| 少女 | 「でも、もうないわ」 |
| 妹 | 「……やっぱり」 |
| 少女 | 「じゃ、お話してあげる。むかしむかし、あるところに記憶再生装置を持つ人がいました」 |
| テロップで、「once upon a time(A.D.2030)」 パソコンの前に座っている、愛と父 | |
| 愛 | 「……ビートルズって検索したら、20件も出てきたわ」 |