| 愛 | 「こいつよ。羽賀々研二よ」 |
| 父 | 「そうか……。こいつの声だ」 |
| 母 | 「羽賀々研二?」 |
| 愛 | 「昔のタレントよ」 |
| 母 | 「千人斬りの?」 |
| 愛 | 「(父に)……ねえ、なあに? 千人斬りって」 |
| 父 | 「(無視して)なんで羽賀々研二の声が?」 |
| 母 | 「そう言えば、あのバーにいたわよ」 |
| 父 | 「羽賀々研二が?」 |
| 母 | 「すぐ隣の席に座ってた」 |
| 愛 | 「ねえねね。千人斬りってなに?」 |
| ゆっくりとフォーカス・インしていく、映像。 テロップで「No.19-7」「2007年8月18日」 そこは、父の記憶と同じ、バー。 |
| カメラは、若き日の父と母の隣に座っている。 | |
| 愛の声 | 「これだわ。2007年8月18日」 |
| カメラの隣には、番組冒頭で登場した、女。 |
| テレビの前の三人。 | |
| 父 | 「あっ、ストライクだ」 |
| 母 | 「えっ?」 |
| 父 | 「あ。イヤ……その」 |
| 愛 | 「なんだか画面が変よ」 |
| ときどき、ザーッとノイズがのる、テレビ画面。 | |
| 父 | 「酔っぱらっているんだな」 |
| 女、グッっとカクテルを飲み干す。 |
| 声 | 「強いねー、キミ。僕もう、酔っ払っちゃったよ」 |
| 女 | 「もう終わりにしましょう、あたしたち」 |
| 声 | 「何? ん? 何?」 |
| 女 | 「あたし、軽い男嫌いなのよ」 |
| 女、立ち上がり、店を出て行く。 | |
| 女 | 「さよなら」 |
| 声 | 「お、おい!!」 |
| 女を追う、目線。 | |
| 声 | 「(つぶやくように)……ケッ、コンチクショウ」 |
| その視線には、隣に座った、若き日の父と母が見える。 見つめ合っている、父と母。 |
| テレビの前の三人。 | |
| 父 | 「……」 |
| 母 | 「……」 |
| 愛 | 「ケッ、コンチクショウ?」 |
| 逆回転して、再び再生される、バーの映像。 キュルキュルキュル、ピッ……。再生。 | |
| 声 | 「ケッ、コンチクショウ」 |
| テレビの前の三人。 | |
| 父 | 「……ケッ、コンチクショウ……」 |
| 母 | 「……ケッ、コン(チク)ショウ……」 |
| 愛 | 「ケッ……コン……シヨウ?」 |
| 三人 | 「(同時に)ケッコンしよう?」 |
| 父 | 「そ、そうだったのか」 |
| 母 | 「やっぱり(と泣く)」 |