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「やっぱりって何だ、やっぱりって」
「やっぱりあなた、あたしのこと愛してなかったのね」
「なんでそうなるんだ。俺たちは愛し合ってたから結婚したんじゃないか。誰がプロポーズしたかなんて、関係ない。あの時、羽賀々研二の声が聞こえた時、俺にもおまえにも愛してる、って気持ちがあったから結婚したんじゃないか。そう思わないか?」
「思うわ。そう思う」
「エッチな店に行こうとも、朝のチューが短くなったとしても、俺たちは愛し合ってるからこうして幸せに暮らしているんじゃないか」
「(泣いている)」
「なんでそんなこと言うんだ。なんで愛してないだなんて言うんだよ」
「そうよ。なんでそんなこと言うの? ママ」
「名前よ」
「名前?」


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「名前を呼んでくれないからよ!!」
「え……?」
「あんな物があるから、いけないんだわ」

 母、パソコンを持ち上げ、投げつける
ガッシャーン。

「きゃっ」
「何てことするんだ。……何だよ、名前って」
「結婚して20年以上になるけど、あなたは一回もあたしの名前を呼んでくれないじゃないの」
「なんだ、そんなことか……」
「そんなことじゃないわ・結婚前は、キミなんて呼んで、結婚してからはおまえって呼んで。愛の前じゃママって呼んで……。一度ぐらい、名前で呼んでくれたっていいじゃないの」
「名前……?」
「名前……」

 父と愛、ちょっと焦る。


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  母、二人を睨む。

「やっぱり忘れてるのね」
「おまえの名前……。名前……(チラッと愛を見る)」
「(小声で)ママの名前? ママ……じゃないの?」
「こんな機械に頼っているから、あなたたちはあたしの名前を忘れちゃったんだわ」

 母、今度はパソコンを蹴飛ばす。ボカッ。ボカッ。

「じゃ、じゃあ、おまえはどうなんだ。おまえは俺の名前覚えてるのか?」
「ん?」
「パパとかあなたとか呼んでるが、俺の名前を覚えているのか?
「あなたの名前……」
「パパの名前……」

 焦る、母と愛。
父、二人を睨む。

「えーっと……」


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「……パパ……じゃないわよね」
「俺の名前は……」

 父、急に表情が曇って、

「……あれ?」
「……」
「……」

 長い間。

「馬鹿な。(失笑して)自分の名前を忘れるなんて、そんなことが……」
「あれ? あたしの名前は?」
「ちょ……ちょっと、パパ? ママ?」
「記憶だ。記憶を再生すればいいんだ」

 父、慌ててパソコンの前に行くが、

「こ……壊れてる」

 間。

「お……俺の名前。俺の……ウ……うわーッ(と絶叫)」
「あたし……あたしの名前……ギャーッ(と絶叫)」


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「パパ? ママ?」

 暴れまわる、父と母。

「誰だ? 誰なんだ? 俺は……俺は誰なんだ!!」
「あたしはだれ? ねえ、あたしは誰?」
「……」

 洋館の少女の声が先行して---、

少女の声「ねっ、記憶再生装置なんてない方がいいでしょ?」

 エンディング・タイトル

Na「西暦2100年、私たち人類は現代よりもはるかに古めかしい暮らしを送っている。この百年の間、人類が生んだ新たな技術は、未来を明るくしてくれるものっではなかったのである。」
 〔第7話・完〕



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