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「(父に小声で)記憶再生装置のおかげね」
「この三ヶ月後、パパがプロポーズしてくれたのよねー」
「へえ」
「(愛に小声で)プロポーズしたのはママの方だよ」
「(父に小声で)そうなの?」
「やだわ、パパったら。照れることないじゃない。男がプロポーズするのは、当たり前のことなんだから」
「はっはっは。どうして隠すんだよママ。女がプロポーズしたからって、ちっとも変じゃないぞ」
「あたしじゃないわよ」
「俺じゃないよ」
「どっち?」
「パパよ」
「ママだよ」
「パパだってば」
「ママだよ」


25


「(真面目な顔になって)……ちょっとあなた、忘れちゃったの?」
「おまえこそ、ホントに覚えてないのか?
「喧嘩しないでよ。……見ればわかることじゃない」

パソコンの前に座っている、三人。
愛がキーを叩き、モニターを見て、

「プロポーズ……。7番のディスクか」
「日付だって覚えてるわ、2007年の8月18日」
「うん、そうよ。2007年の8月18日だわ」

本棚からディスクのファイルを取り出す、愛。


28 父の記憶(主観)

  ゆっくりとフォーカス・インしていく、映像。
テロップで「No.7-7」「2007年8月18日」
----そこは、ムードたっぷりのバー。


26


 カウンターに座っている、カメラと若き日の母。

若き日の母「あたし、少し酔っちゃった……」
父の声「僕もだ・僕は、君の美しさに酔っちゃったよ」

 スイートに見つめ合う、二人。
少しの間が合って、

「ケッ……コン……シヨウ」

 画面、静止する。


29 杉田家・リビング

 テレビの前の三人。

「(リモコンを手に)ホラやっぱりパパだったじゃない」
「ちょっと待て。今のは俺の声じゃないぞ」
「え?」

 父、リモコンを奪う。


30 父の記憶(主観)


27


 逆回転して、再び再生される、バーの映像。
キュルキュルキュル、ピッ……。再生。

「ケッ……コン……シヨウ」


31 杉田家・リビング

 テレビの前の三人。

「(リモコンを手に)なっ」
「ホントだ。パパの声じゃない」
「緊張して、声が裏返ってんじゃないの?」
「どっかで聞いたことあるような声だったわ」
「そうだな、どっかで聞いたことあるような声だったな」
「誰よ、誰の声よ」

長い間。

愛・父「(同時に)あっ」

テレビの横のディスクを一枚取る、愛。


28


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