| 愛 | 「(父に小声で)記憶再生装置のおかげね」 |
| 母 | 「この三ヶ月後、パパがプロポーズしてくれたのよねー」 |
| 愛 | 「へえ」 |
| 父 | 「(愛に小声で)プロポーズしたのはママの方だよ」 |
| 愛 | 「(父に小声で)そうなの?」 |
| 母 | 「やだわ、パパったら。照れることないじゃない。男がプロポーズするのは、当たり前のことなんだから」 |
| 父 | 「はっはっは。どうして隠すんだよママ。女がプロポーズしたからって、ちっとも変じゃないぞ」 |
| 母 | 「あたしじゃないわよ」 |
| 父 | 「俺じゃないよ」 |
| 愛 | 「どっち?」 |
| 母 | 「パパよ」 |
| 父 | 「ママだよ」 |
| 母 | 「パパだってば」 |
| 父 | 「ママだよ」 |
| 母 | 「(真面目な顔になって)……ちょっとあなた、忘れちゃったの?」 |
| 父 | 「おまえこそ、ホントに覚えてないのか? |
| 愛 | 「喧嘩しないでよ。……見ればわかることじゃない」 |
| パソコンの前に座っている、三人。 愛がキーを叩き、モニターを見て、 | |
| 愛 | 「プロポーズ……。7番のディスクか」 |
| 母 | 「日付だって覚えてるわ、2007年の8月18日」 |
| 愛 | 「うん、そうよ。2007年の8月18日だわ」 |
| 本棚からディスクのファイルを取り出す、愛。 |
|
ゆっくりとフォーカス・インしていく、映像。 テロップで「No.7-7」「2007年8月18日」 ----そこは、ムードたっぷりのバー。 |
| カウンターに座っている、カメラと若き日の母。 | |
| 若き日の母 | 「あたし、少し酔っちゃった……」 |
| 父の声 | 「僕もだ・僕は、君の美しさに酔っちゃったよ」 |
| スイートに見つめ合う、二人。 少しの間が合って、 | |
| 声 | 「ケッ……コン……シヨウ」 |
| 画面、静止する。 |
| テレビの前の三人。 | |
| 母 | 「(リモコンを手に)ホラやっぱりパパだったじゃない」 |
| 父 | 「ちょっと待て。今のは俺の声じゃないぞ」 |
| 母 | 「え?」 |
| 父、リモコンを奪う。 |
| 逆回転して、再び再生される、バーの映像。 キュルキュルキュル、ピッ……。再生。 | |
| 声 | 「ケッ……コン……シヨウ」 |
| テレビの前の三人。 | |
| 父 | 「(リモコンを手に)なっ」 |
| 愛 | 「ホントだ。パパの声じゃない」 |
| 母 | 「緊張して、声が裏返ってんじゃないの?」 |
| 愛 | 「どっかで聞いたことあるような声だったわ」 |
| 父 | 「そうだな、どっかで聞いたことあるような声だったな」 |
| 母 | 「誰よ、誰の声よ」 |
| 長い間。 | |
| 愛・父 | 「(同時に)あっ」 |
| テレビの横のディスクを一枚取る、愛。 |