| リモコンを止めた、父。 | |
| 父 | 「ジョージ・ハリスンだ!」 |
| 愛 | 「そっか。ジョージ・ハリスンか」 |
| 父 | 「あー、スッキリしたなぁ」 |
| 愛 | 「でもパパ、こんなお店に行ったことママに知られたら、大変だよ」 |
| 父 | 「大丈夫。パパとママは愛し合ってるんだから」 |
| 愛 | 「でも最近ママの様子、変だよ」 |
| 父 | 「何が?」 |
| 愛 | 「何がって……え?」 |
| 二人、振り返ると、そこには買い物から帰った、母の姿。 | |
| 愛 | 「ママ!」 |
| 父 | 「あ……っ!」 |
| 母 | 「……」 |
| 提供・CM |
| 食卓を囲む、父とは母、そして愛。 ただ黙々と食事が進む中、母だけは手をつけない。 | |
| 愛 | 「(父に小声で)ねっ、変でしょ?」 |
| 父 | 「(小声で)ああ」 |
| 母 | 「……あなた、あたしのこと、もう愛してないのね」 |
| 父 | 「(箸も止まって)……え?」 |
| 母 | 「そうよ。もう、愛してないんだわ」 |
| 愛 | 「(父に)あんな店行ったからよ」 |
| 父、立ち上がって、 | |
| 父 | 「何言ってんだよ。俺たちは近所でも仲がいい夫婦って、評判なんだぞ。結婚してもう20年以上になるが、俺はおまえを愛してるよ」 |
| 娘の愛も、必死にフォローする。 | |
| 愛 | 「そうよ、ママ。あんな店行くの、普通よ普通」 |
| 父 | 「あんな店行ったからって、ママを愛してることには全然変わりないさ。なあ。」 |
| 愛 | 「毎朝出掛ける前だって玄関でチューしてるもんね」 |
| 父 | 「あははっ。よせよ、照れるじゃないか」 |
| 愛 | 「その歳の夫婦にしては薄気味悪いぐらい仲いいわよ」 |
| 父 | 「だろ? だろ? あっはっはっは」 |
| 父と愛、口からご飯を飛ばしながら大笑い。 | |
| 母 | 「ちがうわ!!」 |
| 父 | 「え……?」 |
| 愛 | 「ママ……」 |
| 母 | 「昔のあなた、今よりあたしを愛してくれてた」 |
| 父 | 「……」 |
| 母 | 「朝のチューだって、今よりずっと長かったわ。チュ〜ッってぐらい、長かった」 |
| 父 | 「そんなことないよ。昔も今も同じだよ」 |
| 愛 | 「そうよ、同じよ」 |
| 母 | 「比べてみたって、いいのよ」 |
| 父 | 「比べる?」 |
| 愛 | 「記憶を……再生するの?」 |
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ゆっくりとフォーカス・インしていく、映像。 テロップで「No.34-02」「2008年5月23日」 ----そこは、杉田家の玄関である。 カメラの前には、若き日の母。 娘の愛にうりふたつの美しさ……。(一人二役) | |
| 父の声 | 「じゃぁ、行ってくるよ」 |
| 若き日の母 | 「いってらっしゃい(と微笑む)」 |
| 父の声 | 「うん」 |
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カメラ、若き日の母の顔に近づく。 若き日の母、口づけを待つ顔になって……。 |